女声合唱 アルモニ・レジュイ 第3回コンサート プログラム・ノート


1.Busto宗教曲集

Javier Busto(1949〜)はスペイン北東部バスク地方に生まれ、医学の学位を取得。同時に独学で音楽を学び、現在は、作曲家、合唱指揮者として世界中から注目を集めている。
「Ave Maria」「Salve Regina」はマリアに対する讃歌、スペインの熱狂的なマリア信仰を彷彿とさせる。「Magnificat」はマリアによって歌われた神に対する讃歌、神への感謝とゆるぎない信仰が力強く歌われる。

2.風がおもてで呼んでゐる

原曲はソプラノとバリトンのための二重唱で、谷篤・潤子夫妻から萩京子氏に委嘱され、1992年に初演されている。本日演奏するクラリネットとピアノ伴奏による女声合唱版は、本年度のアルモニ・レジュイの委嘱であり、本日が全曲完成の初演となる。
萩氏はオペラシアターこんにゃく座の音楽監督を務める作曲家であり、オペラやソングなど数多くの曲を書いている。宮澤賢治のテキストを題材とした作品も数多い。
「風がおもてで呼んでゐる」は、東北の美しくも厳しい自然の中で懸命に生きる人々の営みを、時にはユーモアさえ交えながら描写した後、やがて賢治が過労で倒れ、病床での幻覚を経て、ついに精神が肉体から解き放たれ、透明に輝き始めるまでの時間が歌われている。
たった一本のクラリネットが、この曲の味わいを筆舌に尽くしがたいほど豊かにしている。超多忙な中、練習直前の日の未明に東京からFAXで書き上がったばかりの楽譜を送ってくださった萩京子さんに心から御礼を申し上げたい。

3.オペラ「森は生きている」より

 ロシアの児童文学者、サムイル・マルシャーク(1887-1964)の原作をもとに、やはりオペラシアターこんにゃく座の芸術監督を務める林光氏がオペラにしたもの。1954年に俳優座で初演されて以来、今日まで、数え切れない程、上演されている。
吹雪が吹き荒れる大晦日の夜、わがままな幼い女王が4月に花開くマツユキ草をとってくるようにとの通達を出し、貧しい少女が継母に言いつけられて、森に探しに来る。そして、凍えそうになりながら森の中をさまよい歩くうちに、たき火を取り囲む12の月の精に出会い、彼らは娘のために森を一瞬にして4月に変えてしまうのだった・・・
本日はオペラのなかの大きな見せ場の一つである月の精が季節を春に早送りしてしまうこのシーンを取り出してご覧いただきたい。

4.女声合唱曲集 「木とともに 人とともに」

曲集に含まれる3曲とも、1997年から2000年にかけて混声合唱曲として誕生した。作曲者の三善晃氏は混声合唱楽譜の出版にあたり《谷川さんと、すべての「いのち」のために》と題したノートを寄せているが、この題名こそが3曲を貫く「思想」であろう。
本日演奏する女声合唱編は、東京の「合唱団るふらん」により2000年6月に委嘱初演されたもの。混声合唱を聴かれた方は、「女声ならではの情感、細やかでしなやかな彩色のタッチが、詩句のたたずまいや遠近法を変え」たという三善氏の言葉に深く頷かれるに違いないだろう。
世界を震撼させたテロ事件とその後の展開を例としてあげるまでもなく、21世紀に入った今なお、「すべてのいのち」の尊厳が大きな危機に瀕している。歌がなし得ることは微力であるが、非力であるとは思わない。私たちの歌うという営為が、その回復に向けた強い祈りの姿であらんことを切に願っている。

・豊中少年少女合唱団のステージの演奏者
  朗読:河中麻里
  ピアノ:西岡恵子、野々山恵
  フルート:内賀島治美

・豊中少年少女合唱団 プロフィールと団員名簿
2001年2月に豊中混声合唱団の支援により創設。児童だからこそ「本物の音楽」にふれるべきである、との理念の基づき、心に大きな感動をもたらす第一級の合唱曲を歌い続けている。また豊中混声との共演にも力を入れている。指揮は西岡茂樹が担当。小学生から中学生までの団員を募集中。
浅野彩也香、浅野真梨奈、荒川晃平、荒川修平、内賀島仁美、河中彩子、河中季子
阪口 楓、中井靖子、中井亮、西岡友樹、野々山綾、峯崎綾  西岡彩音(研修生)