沖縄のスケッチ   寺嶋陸也氏から寄せられたメッセージ   2008年7月12日 豊中混声第48回定期演奏会

『沖縄のスケッチ』 児童合唱、混声合唱、三線とピアノ連弾のために   寺嶋陸也

沖縄は、日本やアジアの文化や芸術、そして歴史を考える上で、非常に重要な鍵となるところです。なかでも平和について考えるとき、日本人にとっては忘れられない場所でもあります。 歌や踊りが単なるゲームに終わらずに、一人一人が「伝承」を担う者として存在できるように・・・歌や踊りをそこで一緒にいる人に伝える意味と、次の世代にそれを伝えて残す、ということの両方の意味で・・・という願いから誕生した『沖縄のスケッチ』は、はじめNHK東京児童合唱団の委嘱作品として児童合唱にテノール独唱が加わる編成で作曲、のちに混声合唱、女声合唱、2つの版を作りました。

2005年1月の初演以来、児童合唱の形でも、女声合唱や混声合唱の版でも、外国も含む各地で演奏されてきました。きょうの演奏は、さらに新しく作った児童合唱プラス混声合唱という第3の版の初演となります。

ここで歌われる歌は、第4曲「私たちの星」以外は、すべて沖縄のわらべうたや民謡を素材としています。 今までの多くの演奏でもそうだったように、今回も沖縄からかけつけてくれた具志幸大さんに振付と演出をお願いすることができました。ご自身によるすばらしい舞踊と三線の演奏もあわせてお楽しみください。

第1曲「あかなー」 沖縄本島のわらべうた2曲をもとにしています。「あかなー」は、沖縄本島にいる妖怪で、真赤な髪で顔も見えないほど小さく、こどもたちに好かれ、夕やけになるとこどもたちはあかなーのことを思い出してこれらの歌を歌うといいます。

第2曲「はららるでぃ」 与那国島の子守唄2曲をもとにしています。「はららるでぃ」とは、こどもを寝かしつけるときのはやしことばです。

第3曲「だんじゅかりゆし」 もとは船出に際して海上の平安を祈る歌でしたが、今では舟にかぎらず旅に出る人の無事と健康を祈り、旅立ちを祝福して歌うようになった、沖縄本島の民謡です。はじめに歌われるゆるやかな部分と、出港のときに歌ったという速い部分との2部からなっています。

第4曲「私たちの星」 この曲はまったく新しく作曲した曲で、谷川俊太郎さんの詩に沖縄ふうの音階でメロディーをつけました。『沖縄のスケッチ』全曲のテーマを象徴する間奏曲。

第5曲「久高(くだか)」 沖縄本島の民謡をもとにしています。久高万寿主(くだかまんじゅしゅ)という遊び人のことを面白おかしく話してきかせる内容の歌で、そのストーリーもところによりさまざまに伝承されています。エイサー(旧盆に、太鼓や三線にあわせて踊り、歌いながら練り歩く沖縄の伝統行事)で使われる代表的な曲でもあります。

第6曲「赤田首里殿内(あかたすんどぅんち)」 沖縄本島のわらべうたをも とにしています。本島南部の首里の三つの神殿のうちの一つが「赤田殿内」で、この歌の前半は赤田で「弥勒まつり」という豊年祭の行事の歌だったらしく、第1曲の「あかなー」のうちのひとつと同じ旋律です。歌の後半「シーヤープー」などのはやしことばの部分は、こどもや赤ん坊を遊ばせる歌です。

第7曲「唐船どーい」 沖縄諸島全域でもっとも良く知られた歌です。カチャーシーという自由なふりつけで踊られる踊りとともに演奏されることが多く、歌詞も踊り同様にその場で即興的に作られるのが本来の形で、歌詞に応じて旋律さえもいろいろに変化するようです。テンポが速く盛り上がるので、宴や祭りの最後のほうで踊られることが多いようです。