それでもなお合唱の恩恵を信じて…
近年、若い人の合唱離れが進んでいる。その理由については、ここでは触れないが、合唱連盟としても、なんとかその状況に歯止めをかけたいと考えていた。そしてその一つの策として、合唱の素晴らしさを知った大人達が若い人達と一緒に合唱をすることによりそれを伝えていけたら、と考え、2001年から「大人と子供が共に歌い合う連盟合同合唱」を始めた。曲は三善晃先生の「木とともに 人とともに」(童声2部、混声4部、ピアノ)をとりあげた。
幸い、趣旨に賛同してくださる方が大人と子供を合わせて230名も集まり、6月10日の合唱祭に向けて準備を進めていた。池田小学校の事件は、その2日前の8日に起こった。合同合唱団にも、近辺のジュニア団体や中学校合唱部が参加しており、その衝撃は筆舌に尽くしがたいものがあった。私事になるが、私の子供の知人も犠牲になった。大人が子供に合唱の素晴らしさを伝えるどころか、学校にいる子供の生命すら守ることができないことに激しい苛立ちが募った。
しかしそれでもなお、私たちは合唱という営みが人類にもたすらおおきな恩恵を信じたい。それを信念に、2001年も、そして翌2002年も「大人と子供が共に歌い合う連盟合同合唱」を続けてきた。
今回、三善先生が書いてくださった《葉っぱのフレディ》は、この3年間の取り組みの一つの結実である。その種が地にこぼれ、鳥が種を運び、あちこちで新芽が芽吹くことを心から祈っている。
合同合唱指揮 西岡茂樹