●一柳 慧(いちやなぎ とし)[1933―2022]
作曲家・ピアノ奏者。神戸生まれ。
作曲を平尾貴四男と池内友次郎に、ピアノを原智恵子に師事。
1949年にピアノ・ソナタで第19回日本音楽コンクール作曲部門(室内楽曲)第1位を17歳の若さで獲得する。
1952年渡米、ジュリアード音楽学校に留学。
1959年にニューヨークのニュー・スクールでジョン・ケージに師事、その後の一柳の作曲活動を左右することになる影響を受ける。
1961年に帰国後、ケージをはじめとするアメリカの実験主義音楽を紹介するほか、図形楽譜を用いた実験主義的な自作を発表する。
一柳による紹介を機に「ジョン・ケージ・ショック」とよばれるセンセーションを日本の作曲界に引き起こす。
1970年代以降の作品は通常の五線記譜法に戻るが、そこには、実験主義的な作品で提起された柔軟で多層的な時間構造が反映されている。
2018年に文化勲章受章
作曲家・作品情報:https://www.schottjapan.com/composer/ichiyanagi/bio.html
③混声合唱とピアノのための「未来へ」 曲:一柳慧/詩:村上精二、川崎洋、鈴木出徹、谷川俊太郎
Ⅰ.特別な朝
Ⅱ.いま始まる新しいいま
Ⅲ.あなた
Ⅳ.未来へ
【解説】2008年12月21日大阪大学混声合唱団第50回記念定期演奏会プログラムより
曲は4人の異なる作者の詩につけられている。
詩はそれぞれに独自の内容を持っているが、そこに共通するのは、21世紀に社会を担うことになる若い人達が、生きるということをどのように考えてのぞむか、という点であろうか。
それらの練り上げられた言葉は、合唱曲を創る上で私にとっても、大いに触発される材料を提供してくれた。
曲は3曲めに歌われる「あなた」だけが無伴奏で、あとの3曲にはピアノがオブリガートとして使われている。
4つの異なる性格をもつ音楽であるが、聴き終えた後、そこに有機的なひとつの世界を感じとっていただくことができれば、作曲者としてこの上ない喜びである。
いつも密度の濃い誠実な指揮をして下さる西岡茂樹さんの元、今回、大阪大学混声合唱団の皆さんがどのような演奏を聴かせて下さるか、楽しみにしています。