題名 :「茂吉の歌六首」
短歌 :斉藤茂吉
編成 :メゾソプラノ、ピアノ
近藤 譲氏プログラムノート(無断転載厳禁)
私はこれまで、声楽曲というものを余り書いてこなかった。実のところ、オペラ《羽衣》(1994)を別にすれば、この《茂吉の歌六首》の6つの歌曲が、日本語の詩による初めての声楽作品になる。 私は長い間常に、日本語という言語の持つ音響的形態と西洋的音楽様式との結合に、漠然とした違和感を覚えてきた。日本語の歌曲作曲を躊躇っていたのは、その所為である。しかし、ただ蹄躇っているだけでは、何も起こらない。取り敢えず書いてみなければ、解決の糸口も掴めまい。「新しいうたを創る会」の田中信昭さんから作曲の打診を受けたとき、そう心を決めて、委嘱をお引き受けした。つまり、この作曲は、私にとって一つの新しい、そして楽しい冒険であった。その結果がどうであったのか、勿論、私自身はそれを判断する立場ではない。ただ、例の違和感は、作曲後の今も払拭されずに私の中に留まっている。 歌詞として用いたのは、斎藤茂吉の短歌6首である。 短歌という詩形式は、本質的に抒情的な性向をもっている。少なくとも私はいつもそう思う。この6曲の音楽が抒情性の強いものになっているとすれば、それは、私のそうした考えの反映に外ならない。 |