原詩の絵画的イメージはまた日の光が十分にあたるものから暗い光景へと展開し、音楽の中にその等価物、すなわち音色の十全なパレットを求めている。そのために調性に回帰することは避けつつも自分なりの協和音を不協和な響きとの対比で探すこととなった。特に曲の最初と最後に置かれている 花野へ とEnglish Winds でその傾向が顕著である。この2曲は響きの点でも、音のフィギュアの点でも共通するものが多く、曲集に一つのシンメトリーを与えている。特に両者の曲頭に出る長二度下行するモチーフは、一方では「旅への誘い」としての呼びかけとしてのそれ、他方では風をあらわすそれとなる。曲集全体を通じて、ピアノの役割は大変重要で、しばしば詩の喚起するものは言葉が歌われる部分よりも、ピアノが受け持つその前後の言わば音楽的注釈とでも言える部分で時間をかけて展開する。ひつじぐも では特にその傾向が強いが、この曲では同時にうたのパートも母音やハミングを使って、言葉からこほれ落ちたメロディーをうたい続ける。